「量子の世界は、ここから広がる。」企業研究者から学生まで、多様なバックグラウンドを持つ参加者がNQCで得た学びと進路

前列左から入江 美穂さん、森 千紘さん、石倉 朋佳さん、伊藤 日向さん、前蔵 遼さん。後列はNQC運営メンバー

2025年度「量子ICT人材育成プログラム」振り返り座談会
「量子の世界は、ここから広がる。」
企業研究者から学生まで、多様なバックグラウンドを持つ参加者がNQCで得た学びと進路

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、量子計算や量子通信をはじめとする「量子ICT」分野において人材が十分に確保されていない現状を踏まえ、関連分野の知識を備えた研究者やエンジニアの育成を目的とし、2020年度より「量子ICT人材育成プログラム(NICT Quantum Camp:NQC)」を実施している。

本プログラムは2つのコースが設けられている。ひとつは、量子技術に関心を持つ人が基礎知識を幅広く学べる「体験型人材育成コース」、もうひとつは、量子技術に関する調査や開発、研究に取り組みながら資金支援を受けられる「探索型人材育成コース」である。

本稿では、2025年度の「体験型」に参加した3名と、「探索型」に参加した2名が集まり、NQCに参加したいきさつや感想をはじめ、量子情報分野の魅力や将来の可能性について意見を交わした座談会の模様を紹介する。また本年度も聞き役はNQC運営メンバーを務める横山輝明氏が務めた。企業の研究者から学生まで、立場の異なる参加者が同じテーブルにつき、「量子とどう関わっていくか」「いま何が難しいのか」「参加前の不安にどう答えるか」を率直に語り合った。(文・構成:カトウワタル)

<プロフィール>

横山 輝明
国立研究開発法人情報通信研究機構 量子ICT協創センター 主任研究員

入江 美穂
社会人

前蔵 遼
東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程/理化学研究所 量子コンピュータ研究センター

伊藤 日向
仙台高等専門学校 名取キャンパス 総合工学科 機械・エネルギーコース 4年

森 千紘
TOPPANデジタル 技術戦略センター 量子・情報科学研究部

石倉 朋佳
京都工芸繊維大学 工芸科学部 情報工学課程

高専、修士課程、博士課程、社会人、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者たち

座談会の冒頭、横山氏は参加者のバックグラウンドを確かめていった。NQCには量子の専門分野も、所属も、目指す進路も違う参加者が集まる。座談会に参加したメンバーも、立場の違った参加者の話を聞ける貴重な機会とあって、真剣に耳を傾けていた。

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国立研究開発法人情報通信研究機構
量子ICT協創センター 主任研究員の横山輝明氏

東京大学の博士課程と理化学研究所の量子コンピュータ研究センターに所属している前蔵遼さんは、この4月からは3年生となる。「今後も研究者を目指して続けていくのですか?」との問いに、「必要とされればですが(笑)」と控えめながら語った前蔵さんは、理化学研究所での量子制御の研究にも取り組んでおり、今回は「探索型」に参加した。

続いて、京都工芸繊維大学 工芸科学部 情報工学課程の石倉朋佳さん。通信系の研究室に所属しながら、量子情報にも関わりたいと「体験型」に参加した。「通信も情報理論みたいな話ですか?」という問いに頷きつつ、「エンジニア寄りというより、興味がそちら(理論側)に向いている」と話す。量子という言葉で一括りにされがちだが、研究の入口が情報理論なのか、計算機実装なのか、あるいは物理実験なのかで内容は大きく異なる。

同じく「体験型」に参加した伊藤日向さんは現在仙台高等専門学校の4年生。この春より5年生になるという伊藤さんに横山氏が「その先は意識しているのですか」と尋ねると、伊藤さんは「どこかの研究室で拾っていただければ」と率直に答える。さらに「編入できればと思っています」と将来の進路を口にし、指導教官や相談相手の存在も話題にのぼった。

製薬会社に勤務し、今回「探索型」に参加した入江美穂さんは、NQCで得た情報や知識を会社に持ち帰り、自身の業務にもつなげたいと話した。

最後に、TOPPANデジタル 技術戦略センター 量子・情報科学研究部の森千紘さん。部署名に「量子」とつく研究部門に所属しているが、入社時点では量子が未知の領域だったという。間もなく入社4年目を迎える森さんは、これまで化学計算やマテリアルズ・インフォマティクスに携わってきたが、研究テーマへのアサインを機に量子に量子化学計算の必要性から関心を持ち、さらに同じ部署内の量子暗号・ICT領域の理解を深めるためNQCに参加したと理由を明かした動機を語った。

各メンバーの話を聞いた横山氏は「皆さんバラバラですね」と述べた。学生から企業研究者まで立場はさまざまで、専門分野や量子との関わり方にも違いが見られた。

NQC参加者が描く今後の進路

続いて横山氏は、参加者に今後の進路についての考えを尋ねたところ、大学への編入を目指している高専生の伊藤さんや、修士課程に進学する石倉さん、博士課程の前蔵さんなど、現在学生の3人はそれぞれ、今後も量子分野での研究を進めていきたいとの意向を示した。

一方、NQCプログラムが始まってから6〜7年が経ち、この間量子分野を取り巻く状況も変化してきた。横山氏は、NQCの参加者の中にも量子関連のベンチャー企業に関わる人が増えてきていると紹介し、前蔵さんにベンチャーという選択肢についても尋ねた。

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東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程/
理化学研究所 量子コンピュータ研究センターの前蔵 遼さん

前蔵さんは、実際に量子関連ベンチャーのインターンシップに参加した経験について触れつつ、大阪大学の研究者などが創業した企業で、論文の検証に関連する技術の実装などに取り組んだという。そうした経験から、ベンチャーの活動にも関心を持っていると話した。

量子分野の進路は、大学や研究機関だけでなく、スタートアップや企業へと広がりつつある。参加者それぞれが異なる立場にいながら、今後どのようにこの分野に関わっていくのかを模索している様子がうかがえた。

なぜ「量子」に惹かれるのか?

議論は「なぜ量子に興味を持ったのか」という話題へ移った。これは、NQCへの参加を検討している人にとっても参考になる問いだ。

入江さんが最初に参加したのはQ-Questのプログラム。量子アニーリングによる組合せ最適化は現在課題となっている色々な問題に活用することができるのではないかと思い、量子への興味を持ち始めたという。しかしながら、入江さんの立場は一貫して冷静だ。量子は「選択肢の一つとして持っておければいい」と、専門家を目指すわけではないし、規模と性能が上がったときに「量子を使ったほうがよい」という可能性を見据えている。

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製薬会社に勤務する入江 美穂さん

前蔵さんの原点は2014年、高専2年生のとき図書館で見つけたDVDの中で古澤先生(東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 教授 古澤 明)の特集に触れ、「量子コンピューター」という言葉を初めて知った。「何かすごそうだな」と直感的に思った前蔵さんはその後編入して大阪大学へ進み、大学院進学で東京大学へと移った。

高専生の伊藤さんは、材料物性系の授業で量子に出会った。偏微分方程式が出てくる授業で、誰も理解できず教室が静かになったというが、工学中心で学んできた高専生にとって、理学寄りの量子は難しい。だが、その「分からなさ」が「面白さ」に変わったことがNQCへの参加にもつながった。

情報理論や通信理論に関心を持っていた石倉さんは、情報セキュリティの授業の中で量子に触れる機会があったことがきっかけで、研究室選びの過程で量子を取り扱う現在の研究室を選んだという。

森さんは、大学院時代に量子化学計算の論文を読んだ経験はあったものの、本格的に量子に関わるきっかけとなったのは、社会人になってからの配属だった。本人も驚きのある配属ではあったが、現在では計算やAIを化学分野に活用する延長線上に量子があると感じており、量子技術への理解をさらに深めるためNQCへの参加を決めたと語った。

横山氏も自身の原点として、慶應大学の村井純氏の言葉をテレビ越しに聞いた1994年頃のエピソードを紹介した。当時はまだWebもほとんどなく、pingやtracerouteでつながること自体が面白かった時代。そこから高専を辞めてSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)へ進んだ経験を語り、「量子にも当時のインターネットに似た状況」であり、「今はそれぞれの要素を解明するなど、知見を蓄積していくことが大事なフェーズ」と続けた。

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第一線の研究者と議論しながら、量子と応用分野をつなぐ経験

NQCプログラムの大きな特徴は、量子分野の第一線で活躍する研究者と直接議論しながら、量子技術を実際の課題にどう応用するかを考える機会があることである。

横山氏は、プログラムを支える人物として佐々木氏(国立研究開発法人 情報通信研究機構 オープンイノベーション推進本部 主管研究員、NICTフェロー 佐々木雅英)の存在を挙げる。佐々木氏は「量子の世界を代表する100人」に数えられる研究者でありながら、参加者の取り組みに関心を寄せ、気さくに声をかけてくれる。テーマが面白いと感じると、その進展を自分のことのように喜ぶこともあるという。量子分野の研究者と近い距離で議論できる環境は、参加者にとって大きな刺激となっている。

一方で、特に探索型プログラムにおいては、量子技術だけを扱うのではなく、実際の応用分野と結びつけたテーマにも取り組む。2025年度は「気象」と「創薬」がテーマとなり、参加者は実際のデータを使いながら最適化問題に取り組んだ。入江さんのチームは創薬分野のデータを用い、FMQAと呼ばれる手法を使った解析を進めたという。

量子分野の研究者と直接議論しながら、量子技術を実際の応用課題と結びつけて考える経験が得られることも、NQCに参加する大きな価値の一つとなっている。

「コア」「ブリッジ」「ユーザー」―量子分野における人材像の難しさ

議論が進むにつれ、横山氏は人材像を整理するための枠組みとして、「コア人材」「ブリッジ人材」「ユーザー人材」という三分類を提示した。技術そのものに直接関わるのが「コア」、別分野や社会とつなぐのが「ブリッジ」、技術を活用して価値を生む「ユーザー」。AIでもインターネットの領域でも当てはまる整理だという。

ただし量子では、ブリッジとユーザーの境界がまだまだ曖昧、と横山氏は言う。何かを実現しようとすると、技術自体に手を入れなければならない場面が多く、「使う側」のつもりでも「作る側」に踏み込まざるを得ない。だからこそ、コア側もユーザー目線で「何が価値になるか」を考える必要がある。

この問いを受け、前蔵さんは自分の立ち位置を「コアとブリッジの中間」と表現した。超伝導やマイクロ波などの物理系の領域で、ハードウェア設計や制御に関わりつつ、制御手法に異なるアプローチを持ち込む。基盤を意識しながら、コア領域に独自の視点を加えるという感覚だ。また理化学研究所で「ハイブリッド量子回路研究チーム」に所属しており、同じ研究室内でも超伝導や電子、イオントラップなど、さまざまな方式を組み合わせて研究していると説明した。

森さんは日頃の業務として、共同研究で開発した量子・古典ハイブリッド型アルゴリズムを大阪大学と共同開発している。大阪大学の実機だけでなく、IBMの実機にも触れる機会がある業務においては、量子コンピュータの実機にも触れる機会があるという。コーディングはするが、装置を組むわけではない。横山氏が「ユーザー側」と見立てたのは、まさにこの「実装された計算資源を使って検証し、研究成果につなげる」役割にある。

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京都工芸繊維大学 工芸科学部
情報工学課程の石倉 朋佳さん

一方、石倉さんも自らを「使う方」と捉える。古典の情報工学を学んできた立場から、量子アルゴリズムがどう使えるかを考える。これに対し横山氏は、量子側から見れば外に持ち出す人がブリッジだが、情報通信側から見れば、その人はコア研究者に見える場合もある。立場によって、コアとブリッジの見え方は相対的に変わると解説した。

この相対性が共有されたことも、座談会の重要な論点の一つだった。量子分野では「どこまでを量子と呼ぶか」「何を以て専門性とするか」がまだ流動的で、だからこそ言葉による整理も必要だ。

企業の期待と、現在地の共有

座談会では、企業が量子技術にどのような期待を寄せているのかという点も話題になった。横山氏は、量子コンピューターの現在の状況を、かつてのコンピューターやインターネットの初期に近い段階として捉えていると説明する。まだ実用化の範囲が限られている一方で、将来的な可能性が大きく語られやすく、期待が先行しやすい状況でもあるという。

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TOPPANデジタル 技術戦略センター
量子・情報科学研究部に勤務する森 千紘さん

企業の立場から参加した森さんは、研究職として社内の期待を感じる場面があると話した。研究の成果は、最終的には製品やサービスにつながることが求められる。量子技術についても、将来的にどのような形で事業に結びつくのかを意識しながら取り組んでいるという。研究成果が社内で活用され、さらに社外へ展開されていくことが望ましいというのは、企業研究に共通する視点でもある。

一方で、参加者の共通認識として出てきたのは、量子技術に対する過度な期待との向き合い方だった。前蔵さんは、量子コンピューターについて「どんな問題も高速に解ける」というイメージが先行しやすく、そうした理解が広がっている場合があると指摘する。そのため、実際にどこまでできるのか、どの部分がまだ課題なのかを、検証結果をもとに整理して説明することが重要になるという。

入江さんも、量子を万能の技術として受け止める空気には注意が必要だと述べた。量子がすべての問題を解決するわけではなく、現時点では古典計算の方が適している場面も多い。そうした前提を共有しながら、量子を一つの選択肢として位置づけていく姿勢が必要だと考えを述べた。

森さんも同様に、研究の現状を丁寧に伝えることの重要性を感じていると話した。量子分野は注目度が高く、社内外から期待が寄せられることも多い。その一方で、現在の技術レベルや検証段階の成果を正確に共有していくことが、長期的には研究を進めるうえで重要になると感じている。

横山氏は、この点について、研究分野では期待の高まりと失望の反動が繰り返されてきた歴史があると補足した。AIの分野でも、過度な期待の後に研究環境が厳しくなる時期があったという。量子分野でも同じ状況を避けるためには、現在の到達点を冷静に伝え続けることが大切になる。

座談会では、量子技術の可能性を見据えながらも、現状を過不足なく共有していく姿勢が、企業と研究の双方にとって重要であるという認識が共有された。

「どの程度知っていれば参加してよいのか」

また、運営側からは、「どの程度量子を知っていれば参加できるのか」という質問が毎年寄せられることが紹介された。量子という言葉に専門的な印象を持つ人も多く、応募を検討する段階で自分の知識量が足りているのか不安になるケースは少なくないという。特に初学者も多い体験型では、参加前の心理的なハードルは高い。また探索型の場合でも、研究テーマの内容や熱意の水準がどの程度求められるのか分からず、応募をためらう人がいるという。

これに対し、参加者それぞれの経験から、参加前の準備の程度について具体的な話が共有された。

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仙台高等専門学校 名取キャンパス 総合工学科
機械・エネルギーコース4年の伊藤 日向さん

伊藤さんは、自身も参加前は量子に関する知識が限られていたと振り返る。高専の授業で量子に触れ始めたばかりの段階で、基礎的な概念を断片的に知っている程度だったという。それでも参加を通じて理解を深めていくことができた経験から、最初から知識が揃っている必要はないという認識を示した。

石倉さんは、参加を決める前に一般向けの入門書を読みながら準備を進めていたという。ただし、その段階で十分に理解できていたわけではなく、むしろ「興味のあるテーマに触れてみたい」という気持ちが応募の後押しになったと振り返った。

森さんの場合は、企業で量子関連の部署に所属しているとはいえ、配属当初は分からないことが多い状態だったという。学習を進める中では、教科書や論文だけでなく、ChatGPTなどの対話型のツールも活用しながら理解を補っていった。こうした方法を組み合わせながら学んでいくことが、実際の研究活動でも役に立ったと述べた。

前蔵さんは、指導教員経由で昨年の最終成果報告会の案内があったことが応募のきっかけだったという。研究を続けていく上では、研究費の確保や活動の場を自分で整える必要もある。JSTのプログラムなども含め、研究環境を自ら探しながら取り組んできた経験を共有した。

入江さんは、探索型に応募した背景として、これまで取り組んできたチーム活動の継続と論文化の必要性があったことを説明した。研究を進める中で投稿費用などの資金面の課題が出てきたため、支援制度を探す中でNQCの存在を思い出したという。

こうした経験から、研究テーマは最初から完成した形で存在するものではなく、試行錯誤の中で具体化していくものだという認識が共有された。また、研究活動はアイデアだけでなく、時間や資金、関わる人の体制といった要素にも左右されることが、参加者の具体的な経験として語られた。

座談会では、参加前の知識量に明確な基準があるわけではなく、それぞれの立場や関心に応じて学びながら関わっていくことが現実的だという点で、参加者の認識はおおむね一致していた。

5年後、量子の世界で自分はどこにいるのか

座談会の終盤で横山氏は、「5年後、量子とどのように関わっていたいか」という設問を投げかけた。一般的に5年後の2030年代には、量子コンピューターが実用化されていると言われているためだ。学生、博士課程、企業研究者と立場の異なる参加者が、それぞれの立場から自身の将来像について考えを語った。

学生の立場から参加している伊藤さんは、量子分野の研究に本格的に取り組める環境に進みたいと考えている。現在は高専で学んでいるが、大学や大学院へ進学し、量子情報分野の研究を続けていくことを視野に入れているという。まずは研究室で経験を積みながら、量子技術の理解を深めていきたいと話した。

石倉さんも、大学院へ進み研究職に関わる道を考えている。通信や情報理論の研究を続けながら、量子情報の領域にも関わっていきたいという。情報通信と量子技術の接点となる領域で専門性を高めていくことが目標だ。

博士課程の前蔵さんは、量子コンピューターの基盤技術に関わる研究を続けていきたいと考えている。超伝導やイオントラップなど、さまざまな方式が研究されている中で、それぞれの技術課題に取り組みながら、新しい手法や制御のアプローチを探っていきたいとしている。

企業の立場から参加している森さんは、量子技術を実際の研究開発やサービスにどう結びつけるかが重要になると考えている。現在は量子と古典計算を組み合わせたアルゴリズムの評価・検証などに取り組んでいるが、今後は研究成果が企業の開発やサービスに活かされる形で展開されていくことを目指している。

入江さんは、量子技術を専門として追いかけるというより、必要な場面で活用できる選択肢の一つとして扱える状態になっていたいと話した。現時点では古典計算の方が適している問題も多いが、将来量子の性能が向上したときに、どのような問題で活用できるのかを判断できる立場でいたいという。

横山氏は、自身のインターネット黎明期からコミュニティへ参加してきた経験を踏まえ、量子分野はまだ発展途上の領域であり関わる人の数も多くはないため、NQCで出会った参加者同士が、数年後それぞれの立場で再びつながる可能性に触れた。研究機関、大学、企業と活動の場は異なっても、同じ分野に関わる人同士の関係が続いていくことも期待される。

今回の座談会では、量子技術をめぐる立場や距離感の違いが率直に語られた。研究の最前線に身を置く人もいれば、企業の現場で応用の可能性を探る人もいる。これから大学や大学院で学びを深めようとする参加者もいた。それでも共通していたのは、量子を過度に特別視するのではなく、いま何ができて何が難しいのかを見極めながら、それぞれの立場で関わり続けていこうとする姿勢だった。

NQCは、そうした多様な参加者が同じ場で学び、議論し、互いの視点に触れる機会になっている。量子技術の社会実装が今後どのように進んでいくのかは、まだ見通しきれない部分も多い。だからこそ、研究と応用の両方を視野に入れながら、分野を横断して考えられる人材の存在がますます重要になっていく。今回交わされた言葉は、量子分野の現在地を確認するだけでなく、その先を担う人材の輪郭を示すものでもあった。

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